医学統計学・生物統計学 (Biostatistics) は、生物を対象としたデータのとり方、解析方法を考える学問です。実際に利用する上で必要となる、解析結果がわかりやすく解釈できることを大切にします。当教室では、特に医学分野への応用を念頭に置くことが中心です。

生物統計学は公衆衛生大学院 (School of Public Health; SPH) の核となる学問であり、米国公衆衛生大学院協会の定める認定基準で必須領域5つのひとつに指定されています。
日本では、1992年に東京大学において、疫学教室を疫学・生物統計学教室と改称して生物統計学の名を冠した最初の講座が誕生しました(初代教授・大橋靖雄先生)。現在では、数十の大学・研究所で生物統計学の専門家が活躍されています。それでも生物統計学を専門とする人が日本では圧倒的に足りず、国を挙げて人材育成をすすめようとしているところです。(AMED生物統計家育成支援事業;https://www.amed.go.jp/pr/2016_seikasyu_02-04.html)

北海道大学では、2008年に文部科学省の橋渡し研究支援推進プログラムをきっかけに、伊藤陽一先生が特任講師として着任され(その後特任准教授)、2011年3月に先端医学講座 臨床統計学分野となり、引き続き伊藤陽一先生が准教授として活躍されました。現在は2017年の組織システム変更により、教員は医学研究院 社会医学専攻 医学統計学教室の所属、学生は医学院の同教室所属となっています。2018年3月をもって伊藤陽一先生が統計数理研究所に教授としてご栄転され、2018年10月より横田勲が准教授として着任し、教室が再スタートを切ったところです。

また、北海道大学病院 臨床研究開発センターは2018年に厚生労働省の定める臨床研究中核病院に認定され、同センターにおいて生物統計家が活躍されており、同じ生物統計学を専門とする者同士、強い連携関係をとっています。統計コンサルテーションや学内で開催するセミナーを共同で行ったり、勉強会を開催したりしています。

研究内容や大学院生の様子は別のページでまとめてあるため、ここでは教室のポリシーを記したいと思います。

  1. 好奇心を大事にする
  2. 研究を通して健康問題に挑戦している意識を大事にする

どのような研究にも通じることだと思いますが、生物統計でもまだ分かっていないこと、気づいていないことがたくさんあります。当たり前と思われることが、現実では成立しないことだってあります(例えば、漸近的に成り立つだろうことが有限標本ではそうならないケースがたくさんあると感じます)。分からないことを見つけたとき、それを研究したときの楽しさを感じれるよう在りたいと思います。

また、当教室は、統計学の応用分野の中でも、特に医学研究への適用が中心です。医学分野で統計的に解決できないことは日々の臨床試験の支援や統計コンサルテーション等で見つかることが多く、臨床家との距離が近い医学部に生物統計学が無くてはならないのです。一方、生物統計学の専門家である以上、開発する方法論はどういったタイプの医学研究に適用できるか、適用したらどのような解釈が与えられ、何がわかるのか、を意識することで素敵な研究になると信じています。だからこそ、生物統計家は統計学だけではなく、ヒトの健康問題に関心を持つべきと思います。また、メンバーもできるだけ健康でいられるよう、環境を整えていきたいと思います。

このポリシーをThink Wellnessと名付けて、しばらくは教室のキーワードにしたいと思います。

 

当教室に興味を持ってくださった方は、お気軽に横田までメールをください。